erenade
  個々にあてがわれた部屋にあるベッドは睡眠をとるためにあるもので、一人眠れて丁度いいくらいだ。ふたりも乗っていたら狭いのは当たり前だろう。
 ただし今、狭いというのは語弊があるかもしれない。正確には寝転がっているライルの上にティエリアが乗っているので、重くはあったが狭くはなかった。
「おいおい、本気か」
「冗談でこんな事はしない」
 ライルの腹の上に跨ったティエリアはさも当然とばかりに見下ろしてくる。潜入捜査で来ていたドレス姿のままなので、せめてそれだけでも変えてこればいいのにと思うのだが、今からする事を考えると不必要な事だった。
 それでも普段とは違う容姿が気になって仕方がないのだが、ティエリアが言い出した事はテコでも変えないのをこの短い期間でも十分に知っている。言うだけ無駄だと早々に判断した。降参のポーズをとる。
「好きにしろ」
「そうさせてもらう」
 ティエリアは上半身を倒しライルの下半身に顔を寄せた。内心かなり驚いたが、態度には表さなかった。
 丁寧に口に含み、舐めていく。技巧的に決して上手いとは言えなかったが、時折ライルの顔を覗く表情はぞっとするくらいだった。見られるたびに、欲望が膨れ上がる。
「ん……」
 ある程度のところでティエリアが顔を上げる。膝立ちになったので、まさかと思い静止をかけた。
「ちょっ、いきなりする気じゃないだろうな!?」
「いきなりって……?」
「いちいち口で言わせる気か? どんな羞恥プレイだよ」
 腹筋の力を借りて上半身を起こす。ライルはティエリアの腰に手を回した。服は脱がさず、手を差し入れた。秘部に触れる。
「ふっ……」
 勿論だが、そこは固いままだった。自分の指に唾液を塗りつけ指を奥に進める。ティエリアは悩ましい声を出しながらも、指を受け入れようと必死だった。
「ん……もういい」
 だいぶ緩んできたところで、ティエリアが静止の声を上げた。腰を落とそうとする。
「まだ、キツいんじゃないのか?」
「大丈夫だ」
 自分がティエリアの中に入っていく。毎回の事なのに、毎回慣れない。
「あ……あ」
 ティエリアが腰を振る。その痴態はどうみても女だった。
 髪はばさばさと流れるように線を描いた。胸が揺れ、スリットからはすらりとした脚が見える。ガーターベルトをしている事を知り、こんなところまで完璧主義者なのかと心の中で笑った。半分意識を飛ばした視線は、自分を射抜いているようにも、宙を睨んでいるように見える。
 長い睫毛で縁取られた瞳は強い眼光を放つ。眼光は衰えないまま、ティエリアはライルの上で踊った。
 ――なんだろうな。
 こんなに近くにいるのに、ライルにとってティエリアはとても遠い存在だ。彼の中に入ったとしてもそれは同じ。彼の中は深くて終わりがない。まるで底なし沼のようだ。
 ライルにとってティエリアと体を繋ぐのは、快感を得ると同時に喪失感も得るものだ。こんな感覚は今まで得る事がなかった。情愛に関して、それなりに経験を積んでいる。自分の気持ちが自分で計りかねるのは初めての事だ。
「――――っ、あ」
 一際甲高い声を上げて、ティエリアが果てた。それに呼応するように、ライルも頂へ上りきる。
「くっ」
 恐い、と思った。
 見えないものが恐いのと同じように、行く先が見えないのも恐い。
 分からないものに惹かれるのは、恐いのだ。
 まるで、底なし沼に入っていくようなものだからだ。

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