Lovely Honey trap
 「なんだ。また、ミス・スメラギの差し金か」
 恋人が深夜に人目を忍んでくるのだから、もうちょっと温かい言葉をかければいいものの、口から出たのはそっけないものだった。
「違う、僕の考えだ」
 ロックオンに馬乗りになり、挑むような目でティエリアがロックオンを見つめる。その表情や交わされる会話で想像できるのは、どうやっても殺伐としたものだ。
 ティエリアの服装を除いては。
 ティエリアが着ているのはどうみても女性用の下着――ベビードールだった。シックな黒色をしているが、ふわふわとした素材にフリルとレース、リボンがふんだんに使われている。
 それを女性が着ていれば確かに男としてテンションが上がるだろうが、ティエリアはれっきとした男だ。ベビードールも胸を強調するように大きく開いている上に、カップが入っているのでそこだけ浮いていて妙に悲しい。デザイン的には確かに似合っているが、滑稽という言葉が一番近い気がした。浮いたカップの間からは平たい胸が見えている。乳首が見えているところだけは、妙にそそられるといえなくもない。
「それで。どういう考えでこういう事になったんだ?」
「今日は、あなたの誕生日だろう?」
 確かに三月三日はロックオンの誕生日だ。
「だから、今日は徹底的に奉仕させてもらう」
 言うなり、ティエリアはロックオンのブランケットを剥ぎ取った。下半身のあたりにうずくまる。別に意図はしていないのだろうが、よつんばいになって腰だけ高く上げられた。
「ちょ、っと……ティエリア」
 強引にスウェットが剥ぎ取られる。就寝用のものなのでウエスト部分がゆるいのが悪かった。抵抗する間も与えられない。
「ん、ふ……」
 下着から出されたロックオン自身がティエリアの口腔に含まれる。そして、決して上手いとは言えない舌技で攻めてきた。ぴちゃぴちゃと仔猫がミルクを飲むような音が聞こえる。 
 時々、ロックオンを気にして上目遣いに見上げてくる。視覚的にはかなり悩殺ものだが、上手ではない口淫とセットでは蛇の生殺しだ。
「まてよ」
 肩を押してティエリアを剥ぎ取ろうとする。しかし思い通りには、なかなかいかない。ティエリアはくっついて離さないと言わんばかりにロックオンの下半身に絡みついている。
(あー、もうっ!)
 毒を毒で制す。最終手段はそれだった。カップの間から見えるティエリアの乳首に触れた。ティエリアの体が大きく揺れる。
「ロ、ロックオン……」
「お前は続けてろ。俺は俺で好きな事するから」
 それぞれの手でそれぞれの乳首を摘む。指で転がして遊んでいると、次第に芯を持ち始めた。コリコリという触感を楽しむ。
「ふぃ、ん」
 ティエリアの腰が揺れる。裾についているリボンも一緒にゆれていた。それを眺めながらロックオンは更に悪戯を続けた。摘んだり、引っかいたり。淡い色だったそれはいつの間にか赤くなっている。
 いやらしい色だなと思いながら弄り続けているとティエリアがふと顔を上げた。頬が紅潮し、瞳が潤んでいる。苦しそうな顔なのに、どこか恍惚とした表情。ロックオンは自身がぐいっと力を増したのを自覚した。
「んんっ、ふっ!」
 急に成長したそれは、ティエリアの喉を突き刺した。驚いたティエリアが口を外す。ロックオンはそのチャンスを見逃さずに、ティエリアを組み敷いた。
「ロックオン!」
「俺に悪戯した分はきっちりお仕置きするからな」
 バタつく長い手足をロックオンは押さえつける。ティエリアは一晩がどれだけ長いのか、その身で実感する事になった。


 翌日のブリーフィングルーム。
「あらティエリア、どうしたの?」
 普段なら決してないティエリアのぼうっとした表情にスメラギが顔を覗きこんだ。
「いや、問題ない」
 本人の主張と事実は一致していなかった。ティエリアの体が揺れている。低重力空間だからというわけではなさそうだ。
「そう? だったら始めされてもらうけど」
 スメラギ・李・ノリエガは大人だった。それ以上は口にしない。しかし、ちらりとロックオンに視線を移した。ロックオンは視線が合わないように顔をそらす。
「ロックオン、聞いてる?」
「聞いてるよ。ミス・スメラギ」
 スメラギは釘を刺すのを忘れなかった。他のマイスターに分からないような方法ではあったけれど。
 それにしても昨日のは少しはスメラギが関与しているような気がした。ティエリアが(どこで得たか知らないが)仮に知識を仕入れて来たとしても、あの手の衣服まで調達する術を知っているとは考えにくい。
 ロックオンはスメラギの視線が外れると、彼女の方を見た。顔は動かさず、ちらりとだけ彼女の瞳がロックオンを見る。口元が軽く持ち上がった。
(やっぱりな)
 それは確信犯の笑みだった。

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