刹那くんの恋人
 「刹那」
 左肩でとんとんと飛び跳ねられた。体が軽いものが飛び跳ねているのであまり衝撃は伝わってこない。せいぜい、誰かに肩を叩かれている程度の衝撃だ。
「刹那っ!」
「……なんだ、ティエリア」
「何だとは何だ。君は僕の話を聞いているのか?」
 口調も喋っている内容も今までとなんの違いもない。しかし、体が小さくなっただけで、こんなに口やかましく聞こえるものだろうか。甚だ不思議だ。
「ああ」
「嘘を言うな、刹那」
 その後もティエリアは俺の肩上を右へ左へと移動する。落ち着きのないばたばたとした動きに少し辟易してしまった。本人は気にならないのだろうが、地面扱いをされている方としてはかなり落ち着かない。
 ヴェーダと同化したティエリアが、CBに帰ってきた。帰ってきた事は喜ばしいのだが、なぜだか体が小さくなって帰ってきた。どれくらい小さいかと言えば、俺の肩に乗れるくらいだ。俺の生まれ育った地域ではないのだが、ロックオン――ニールやライルが育った地域ではこれくらいの人間が存在するという伝承を聞いた事がある。たしか妖精だとか言っていただろうか。
「ティエリア」
「どうした、今の話で何か分からないところでもあったか?」
「別にない」
「それならどうした?」
「休ませてくれないか?」
 宇宙にいると時間感覚が奪われがちだが、待機の状態ではない以上なるべく規則正しい生活を送りたいと思っているのだ。それにさっきから横になりたくて仕方がなかった。
「僕の話はまだ終わっていない」
 我を通すティエリアに違和感を覚えた。再開した後のティエリアはこういうところでは我を通さなかったはずだ。
「すまない」
 ティエリアをひょいとつまむと部屋の隅においておいた鳥かごに入れた。この際鳥かごが部屋にある事に疑問を感じてはいけない。
「何をする、刹那」
 ティエリアの心境の変化に興味がないわけではないのだが、先ほどからずっと喋り続けるティエリアに限界を感じていた。ベッドのあるところから一番遠いところにティエリア入り鳥かごをくと刹那は早々にベッドに潜り込んだ。
「刹那っ!」
 俺は、ティエリアの怒鳴り声を子守唄に眠りについた。


***

「まったく、刹那は……」
 どんなに呼びかけても刹那は反応しない。眠ってしまったようだ。すぐに眠りに落ちたところを見ると本当に疲れていたのだろう。ティエリアは流石にあきらめて鳥かごの中でしゃがみこんだ。
「沢山話したい事があるのに」
 ヴェーダの中は人間で喩えるところの、母親の腹の羊水の中にいるようなもので落ち着くのだが、ひとりずっといるというのは少々寂しい。小さな体でも実態が持てた事が嬉しいのだ。実態がなければ話す事が出来ない。
「起きたら、僕の話の続きを聞いてくれるだろうか」
 本当に、たくさんの話があるんだ。
 

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