very berry happy birthdeay 2
 ずるずるとライルの自室に連れ込まれたティエリアの気分は、まさに二匹の狼を前にした兎だった。
「待ってくれ」
 言ってみるが、その言葉に効力がないのは重々承知していた。しかし、それでも言いたくなるのだ。案の定、ディランディ兄弟は何も聞かずにティエリアをベッドに乗せた。
「……どうする気だ」
「今更訊くなよ」
 ティエリアにはいつも優しい笑みを浮かべているロックオンの目が恐い。
「ほら、ばんざーい」
 ティエリアの後ろに回ったライルが陽気な声を出して、服を脱がせる。抵抗しようと身を捩ったがロックオンに阻止されて叶わなかった。上半身があらわになる。肉の薄い胸がふたりの前に晒された。
「ティエリア」
 ロックオンの唇が重なる。熱い唇が重なるだけでティエリアの心は反射的に震えた。
「……んっ、く」
 強引に舌が入り込む。様子を見ながら深いキスにしていくロックオンのキスとは思えない、強引なものだ。舌が吸われて、上手に呼吸が出来ない。キスに気をとられていて、首筋に当たる柔らかいものに、すぐに気がつかなかった。
 首筋を辿り、背骨にそって肩甲骨へ落ちる。この柔らかさは唇だ。見えないから分からないが、ライルが押し当てているのだろう。後ろから両方の二の腕を手で押さえつけられたまま、愛おしむように何度も唇が押し付けられる。その感覚にうっとりとしていたら、軽く歯が付きたてられた。甘い痛みが体に走る。
「――――ッ」
 驚きで喉が鳴る。ロックオンは唇を離してくれた。
「……っ、ん」
 擦れた声が喉から出る。ライルが何度も背中に口づけを施す。ロックオンは首筋に顔を埋めた。
「俺が置いてったからいけないんだろうけど……」
 弱々しくて、くぐもった声。肩に息がかかった。少しくすぐったい。ティエリアは身を竦めた。ロックオンが覆いかぶさるようにして、正面からティエリアを抱きしめる。
「自分のものじゃなくなったかと思うと、正直ムカつくよ」
 率直な言葉にティエリアは苦笑した。
「何を言ってるんですか」
 この人は大人に見えて、意外に子どもだ。無性にロックオンが抱きしめたかった。腕を少し動かすと、簡単に腕の拘束が緩まる。ライルが察してくれたのだろう。兄に対して憎まれ口をたたいているが、彼もロックオンの事は大切に思っている。頭を抱え込むように、ロックオンを抱きしめた。
「ずっと」
 ティエリアは目を閉じた。
「ずうっと、僕はあなたのものなのに」
 ロックオンはなにも言わなかった。ただしばらく、ティエリアに抱きついていただけだ。しばらくたってから戸惑いがちに、ティエリアにキスを落とした。
「ん」
 ティエリアは素直にそれを受け入れる。ロックオンは何度も何度も落として、雨のようにキスを降らした。言葉にならない思いが、落とされるキスにこ込められているような気がする。素直にそれを受けた。
「ふっ、ん」
 キスが唇に落とされた。舌が入り込んでくる。優しくて情熱的な口付けに、ティエリアの頭は次第に真っ白になっていった。
 肌の上を、大きな手が滑る。四本の手が身体中を丁寧に撫でた。じわじわと真綿で締め付けられるような愛撫にティエリアは身を捩る。強引にされるより何倍も生々しく感じた。
「んっ」
 どちらかの手がスラックスの前をくつろげる。それだけでドキリとしたのに、迷いなく手が入り込んできて、更に心臓が跳ねた。 
 胸の飾りやティエリア自身を触られる。ティエリアの息があがった。
「あっ、ん……」
はぐらかしていた動きが次第に目的を持って動き出した。どうしても甘い声が唇から零れる。ティエリアはそれを聞きたくなくて、必死に口を閉じようとした。
「声、殺すなよ」
 情欲に濡れたロックオンの声が唆す。
「そうそう」
 後ろから手が回されて、口腔に指が入れられる。歯の間を上手に潜ってきた指は舌に絡められる。
「あ、ふ」
「噛むなよ」
 緩急をつけられて、舌が弄ばれる。ロックオンの手で強い愛撫を受けるたびに、タイミングよくライルの指が口から抜ける。甘い声を止める事は出来なかった。閉じれなくなった口端から唾液が零れる。
「んっ」
 下半身にとろりとしたものが落とされる。熱くなった体に冷たい液体が落とされて、ティエリアは身を竦めた。
「冷たかったか? ごめんな」
 液体を奥に塗りつけられる。ぬるりとした感覚は何度使っても慣れる事はない。どちらのものか分からない指が出入りする。いつの間にか口腔から指は抜かれていたが、閉じれなくなった口から指に合わせて、規則的に声が漏れた。
「ああっ、ん」
 指が快感の深いところを探り出した。もう一度、遠慮がちに触れてくる。
「んんっ……ああっ」
 高い声が出たことで確信を得た指がそこを攻め立てる。ティエリアを攻め立てるものはそれだけではない。胸を摘む指もティエリアを攻め立てていた。自分の指とは違う骨ばった男らしい指が、平らな胸にある赤い飾りを押しつぶしているのを見るのは目の毒だった。
「はっ……あっ、ん」
 頭が真っ白になる。ティエリアは自分が溶けるような気がするくらい深い快感に溺れていった。
「んっ」
 指が抜ける。あ、と思っていた時には誰かがティエリアへ入りこんできていた。どうにか目を開けて確認すると、ロックオンが入り込んできている。同意も得ず、いきなり入りこんでくるのは初めてで、ティエリアは驚いた。大きな目を更に見開いてロックオンを見上げる。
「余裕ねえな。俺も」
 ティエリアの視線の意味を察したのだろう。ロックオンは自嘲的な笑みを浮かべていた。
「いい」
 ロックオンを受け入れていて、苦しいのでどこまで笑みを浮かべる事が出来るか分からない。けれどティエリアは精一杯の笑みを浮かべた。
「僕は、あなたのものだからいい」
 一瞬、虚をつかれた顔をしたした後、ロックオンは嬉しそうな苦しそうな難しい顔をした。ティエリアはその顔から心情を察する事が出来なかった。よく分からなかったのもあるが、すぐに動きが再開されたからだ。
「あっ、あっ……ん、っふ」
 自分の中で欲望が膨れ上がるのと呼応するように、中にいるロックオンが大きくなる。
「ティエリア、ティエリア」
 ロックオンの声が少し切ない。胸が締め付けられた。
「……あっ――」
 宇宙にいるような浮遊感。気がつくと、自分の欲望が爆ぜていた。
「ん」
 苦しそうなロックオンの声がした後、中が熱く濡れる。自然と、短距離を走ったような息使いになった。ずるりとロックオンが自分の中から抜けてくる。
「今度はこっち」
 息が整わない内に体は後ろから押し倒される。ロックオンに倒れこんだ。
「ついてこいよ」
 後ろからライルが入り込む。ライルが奥へと進むたびに、とろりとろりとロックオンが放ったものが溢れて零れた。生々しい感触に頬が熱くなる。
「あっ、ん」
 奥まで入りこんだライルは大きく体を揺さぶった。大きな波に溺れる。自分の意思とは関係なく、反射的に精を放つ。あまりに強い快感に、ティエリアは気を失った。


 ふっと意識が覚醒した。暗闇であたりを見渡すと至近距離からライルがティエリアを見つめていた。
「何だ」
「ただ見つめてただけ」
 にやりとライルが笑う。ぼんやりとその顔をを眺めていたティエリアははっと思い出す。
「今、何時だ?」
「今は」
 ベッドのところにある時計をライルが確認する。
「11時……59分」
「ロックオンッ!」
 ライルと反対側を見る。ティエリアに腕枕をしているロックオンは、ティエリアとくっついて眠っていた。抱きしめるようにティエリアの体に絡みついている。見上げると穏やかそうな顔で眠っていた。
 ロックオンがふっ、と消えた。
「……消えた」
「10日になったからな」
「どういう事だ?」
「冗談だと思ってくれて構わないが」
 ティエリアはライルに話をした。
 昨日夢の中でティエリアは誕生日に何が欲しいのか聞かれた。あまりにも非現実的すぎて、それが夢だとティエリアはすぐに気がついた。なら、叶わない夢でも言えばいいかと思った。
 ティエリアはロックオンを望んだ。二度会えないである人を望んだ。
 それが現実になったのだ。
「でも誕生日だろって聞いた時、分からなさそうな顔をしてただろ? 普通、そんな夢を見たら忘れないだろう?」
「夢だったからな。どこまで現実で、どこまでが夢の世界の話か分からなかった」
 ティエリアの言い回しに不自然さを感じたが、ライルはなにも言わなかった。この話は終わりとばかりにライルが顔を覗き込む。
「喉、渇かないか?」
「少し乾いたかもしれない」
「っていっても、部屋に水はないんだが」
 生クリームのついた指が眼前に突きつけられる。よく見ると、ケーキの上にあっただろう苺だった。咀嚼するとみずみずしい果汁が出てきた。喉の渇きが軽減される。
「美味しい」
「それはよかった」
 ライルはティエリアに身を近づける。おんぶお化けよろしく後ろからのしかかった。
「重い」
「俺だって、ちょっとくらいいいだろ」
 そう言われると、ティエリアは何も言えなくなる。自分が気を失ったせいで、おそらくライルにとって中途半端だったはずだ。それなのに、彼はそれについてなじらない。
「……すまなかった」
「いい、とは言えないけど」
 ティエリアに絡みつく腕の力が強くなる。
「兄さんに逢えたから、いい」
「そうか」
 静寂が訪れる。ティエリアはライルの重みを感じながら、眠りについた。





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ティエリアの誕生日がメインの話なのに、ティエリアとライルがどんだけニールが好きかって話になってごめんなさい。

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